「ダメかな…?」




差し伸ばされた掌、人を殺した事の無い様な優しい瞳にシンは強く戸惑う。

あれだけ敵視していた相手なのに…何故か憎しみさえ忘れそうになった…







未来…そして。









大まかな争いは終戦を向え、オーブとザフトは今度こそはと正式に停戦条約を締結させた。

家族を失い帰る故郷も帰る家も無く、同じ悲しみを分かち合ったホーク姉妹と共にオーブの

仮施設へ居させてもらったものの男がこの環境に長居は少々気を使う。

そして3週間を過ぎた頃だろうか、突然現れたのは以前共の戦艦で戦ったアスラン・ザラ。

目の前に現れた時はどういう反応をすれば良いのか戸惑うものの、終戦した今では彼を裏切り

と思う理由は既に過去のものだ。

そして彼の放つ言葉は未だに忘れはしない。

自分が本当に望む戦いはこうでは無いという事を…

以前は隊長として、そして仲間意識を伴う為の呼び名は今では言えない。

本当はスゴイ人なんだと知っているからこそつい「さん」付けで言えば彼は目を丸くさせ腹から笑う。

そんな笑い方をされれば次第に怒りが徐々に出ても仕方が無いと思うが彼はそんな自分に

子供をあやすかの様、頭をポンポンと軽く撫でる。

対等に見て欲しいと思うものの彼にとっては弟にしか見ていないんだろうなと悔しさと諦めが同時

に溜息を付かす。



「シン、車で来たんだ。もし行きたい所があればどうだ?」



それは彼なりの気遣いだったと直に分かった。














「…本当はちゃんとした墓立ててあげたかったんだけどな。家族は既に此処にはいないし…

だけどもう此処しか家族と向き合える場所が無いから…」



シンが希望を要した場所は以前も訪れた慰霊碑。

この場所を訪れた事で『彼』と対面する事となったのだ。

実の所は恐らくアスランが彼に連絡を直前でとったのだろう。

再開した彼との出会いは以前の記憶を次第に呼び覚ます。



『トリィ』



突如聞こえる動物的な電子音。

舞い上がる緑がかった造り物の鳥から発せられたものだった。

そして共にあらわれた歳の近いであろう少年とも青年ともその挟間を行き交う亜麻色の人物。

男なのにキレイだと魅入ってしまう中、自分の側にいたアスランから衝撃的な言葉が発せられる。



「キラ…」



覚えのある名前。

普段はフルネームで読んでいた為か理解まで少々時間を要した。

目の前まで近づけば遠目からでは分からなかった紫の宝石を更に魅入る。



「シン…彼が…『キラ・ヤマト』だ」



驚きはあった。

だがそれ以上に想像していた『キラ・ヤマト』とのギャップに理解が中々追いつかない。



次に放たれる言葉からこれが終戦後にして『二度目』の彼との出会いだったと知る事となる。













「…どうしたシン?」



思いもしないメンバーで車に乗りかう事でシンは言葉を無くしていた。

…と言うよりは言葉が見つからないのだろう、これまでは敵でありそしてその敵であった彼を目の前に

ボロ泣きしたのだからその恥ずかしさもあるのだろうか?



「シン…だったよね?遠慮はしなくてもいいよ、僕に対して言いたい事も沢山ある筈だから今だから

こそ言ってくれても良いんだよ」

「…いえ、もう今更だし…本人見たら…拍子抜けしちゃったし」

「ぷ…っ」



笑いを込み上げるアスランにきょとんと目を丸くさせるキラ。

以前も同じ様な事を言われたのだろうか?



「じゃあこれから、これからは思った事どんどん言ってよ。一緒に暮らす『家族』となるんなら遠慮は

疲れるだけだし」

「は?一緒に暮らす??」



またしても衝撃的な発言に一体どういう流れでそんな言葉を放つのか、後部座席から乗り上げ

前の座席に座る彼に問い詰める。



「おいおいシン危ないからちゃんと座れ」

「何!?俺そんなの聞いてないし!」

「あれ?アスラン伝えてなかったの?」

「んー…何となく後が良いかと思って」



マイペースな会話からシンは似た者二人を見た気がした。



「じゃあ改めて、シンこれから3人で家族になろうよ」



『家族』



失ったばかりのこの言葉、だが彼の家族は忘れもしない母・父・妹。



「何考えてんだよ!俺はアンタを憎んでいたしそれを今更一緒に暮らそうだなんて頭可笑しいん

じゃないのか?!」

「憎んで『いた』でしょう?今も憎い?僕は君をもっと知りたいんだ…戦争なんてなければきっと

分かち合えた筈。同情とかじゃなく純粋に僕とアスランは君をもっと知りたいと思ってる」

「シン…俺とお前の出会いは最悪なタイミングだった。もし別の場所で出逢っていたら…と思ったら

そういう話に辿りついた。俺も父・母はもういない、共に…暮らさないか?」



走る車から浴びる風。

嬉しさでも悔しさでも…そうで無ければ一体何の感情なのだろうか…

空に飛び交う水滴は風に流れフロントミラーに映らぬ様シンは前座席のシートに隠れる様身体を

震えさせる。



「っ…、何なんだよアンタ達は…」



弱弱しい言葉は流れる風にかき消されるよう二人は小さいながらもその言葉を聞き入れる。

アスランはキラに相槌を送ればキラは俯くシンの髪に指を絡め、優しく頭を撫でる。

子供をあやす…まるで先程のアスランとまったく同じ行為にシンはやっぱり似た者同志だと涙流し

ながらもその口元は笑いを表していた。



「もう…『家族』は失いたくない…側から消えないで下さい…」



それは承諾の言葉。



3人を乗せた車は新たな新居へと走らせた……。










End






















拍手に載せました小説。
SP観て多少のSPネタバレから更にその後の話です。
ネタバレ嫌いな方すみません!!
久々ホモもエロも無くハッピーエンドな話にさせて戴きましたv
自分でも珍しいな〜なんて思います。
本当は女性陣いる筈なのですが自分的の都合上によりこの話では女性陣いらっしゃいません、あはは。
この話たぶん続きます。
おそらくたぶん。
なんせホモ書きさんなんでここで終わらせないかと(笑)




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