「へ〜ここが人間界か」

黒髪の紅い瞳、背中に黒い羽を広げ空を浮く少年。
人は一見し彼の様な人種をおそらく『悪魔』と呼ぶだろう。
しかし同じ悪魔でも種別が違う。
彼は精気を糧とする『夢魔(サキュバス)』だった。










【天使と悪魔の人生ゲーム】GandamSeedDestiny/キラシンパラレル
設定→現代モノで悪魔(夢魔)のシンが悪魔としての階級を上る為に人間界へ行く話。
男の夢魔は女を惑わす事が一般常識だが果たしてシンの場合は…??











「…よし、この辺りは誰もいないな。この辺で降りるか」

人気の少ない場所を選び、この地に足を着ければ特徴ある黒い羽を背中に収める。
空にいる間は姿全体、地に降りた間は羽を人間は見る事が出来ない。
なんて便利な世の中なのだろうとシンは笑いを吐き捨て、さっそく自分の獲物探しを始める事にした。

だが便利な世の中でも思う通りになると言う訳ではないらしい。

「…人間の女って…怖ぇ…っ」

上質な精気は容姿からも意味を成す。
さっそく上質な容姿を持つ女に声かければ簡単に自分へ興味を移し、人気の少ない場所へ移動した瞬間
彼女の精気を奪ったのは良いのだが…かなりのマズさに嘔吐する程だった。
その理由は女の口から吐き出される。

「ちょ…ちょっといきなりキスして吐くなんて失礼ね!どうせ私は整形よ、バカにして!!!」

女は怒りを露わにしながらその場を離れた。
『整形』という人間界ならではの技法にシンは恐怖さえ感じてしまう。

「天然美人ってもしや今じゃ珍しいのか…?」

トラウマにもなりそうな気持ちに不安になりながらも再び路地を歩き出す。
先程の精気が胸焼けを起こしその足取りは一歩進む事さえ億劫となる。

(さっきの女の精気かなり毒素含んでた…元がかなりのブスか人間性が酷く歪んでるかだな)

酷い言い草だが上質の精気は容姿だけでなくその中身(精神)も大きく関わる。
しかしこうも一発目から酷い精気に当たるとこの先不安に駆られる。

(やっべ…吐きそう)

人間と違い悪魔は吸った精気を吐き出す事は無い。
吐きそうと言う感覚はあるが実際は吐き出せないのでその辺は不便である。

「君…どうしたの?」

突如背後から聞こえる優しいテノールの声。
ちらりとその人物の方へ視線を移せば先程の人工美人と比較にならない程の美人がいた。
直感で感じる、コイツは絶対天然モノだと。
天使の様な雰囲気を出す彼女は優しく肩を支えながら自らの自宅へと案内してくれた。

(見知らぬ男を簡単に連れて平気なのか?)

そんな不安もあるがきっと彼女は弱ってる人間に優しいのだとその容姿で思わせる。
短すぎない栗色ショートヘアーに紫の瞳はまるで宝石の様だ。
人間にしては珍しい瞳の色だと感じる。

「今水持ってきてあげるからベッドで寝てて」
「…待って、気分良くなる方法あるから…協力してくれない?」

気分を良くする方法、不味い食事の口直しには美味い料理がつきもの。
つまりは上質の精気を取り入れれば悪い気分も消え失せる。

「協力って…?」
「つまりこういう事だよ」

彼女の腕を引き、崩れた態勢を狙い彼女の唇を奪う。
口内から流れる精気はかなりの上質にシンは喜びを感じた、これは当たりだと。
これ程上質の精気を吸い尽くせば確実に悪魔としての能力も上がり昇格が出来る。
夢魔が人間の命を奪う瞬間であった。

(すっげー極上の精気だ。力がみなぎって来る…)

しかし吸っても吸っても底が尽きる感覚を得られない。
普通の人間ならば当に吸い尽くされ干からび死に至る筈なのだが…

「ねぇ、気分良くなった?そしたら僕にも気分良くしてもらうのがお礼ってものだよね」
「え?」

逆転される態勢。
今現在自分が彼女に押し倒されている。
女の癖に力で抑え込み、いろんな事が不可思議でシンは別の意味からの青い顔。

「僕の精気は美味しかった?」
「!?」

(な…んでコイツ?!)

ただの人間に『精気を吸い出す』と言う行為を知っている筈が無い。
彼女は一体何者なのか?
目を見開き彼女を直視すると彼女はケラケラと笑い出す。

「あははは、まだ気づかないの?まだまだ階級低いみたいだね君」

この言葉から彼女が人間で無い事に気づかされる。
しかし人間で無いのなら悪魔?
いや、同族同士は精気が吸い出す事が出来ない。
人間でも同族でも無く、他に考えられる種族と言えば…

「ま…さか…天使…」
「やっと気づいた?」
「嘘だ…?!天使が人間に紛れて暮らすなんて聞いた事…しかも羽が…」
「知らないの?羽なんて階級が高くなれば同族も悪魔にも隠せるんだよ。
それに天使の中でも人間界に暮らすはみ出し者だっていても可笑しく無いんじゃない?」

天使の精気を吸う。
それで天使を殺せればさぞかし名誉な事だろうが人間で無い者の精気は吸い尽くす事が出来ない。
その為悪魔としての名誉を保つ為にも悪魔が天使の精気を吸い能力を上げる事はもっとも恥晒しの行為であるのだ。
今では禁止行為として深い罰を定められている。

「やばい!俺やばいよ!只でさえ階級低いのに天使の精気吸ったのバレたら…追放されちゃうじゃん!」
「大丈夫大丈夫、僕が君を拾ってあげるから。僕君の事気に入っちゃったv」
「拾うって…おいマジかよ〜。…なぁ、一つ気になったんだけど天使の女って普通『僕』って言うもんなのか?」
「言わないよ」
「じゃあアンタが可笑しいのか?綺麗な顔してんのに『僕』って言うの変じゃない?」
「男が『あたし』って言うのも変じゃない?」
「お…男ーーーーーーー?!」

つくづく騙されっぱなし(勝手に)のシン。
天使でしかも男の精気を吸った事にシンの思考は真っ白となる。

「禁断である種族違いの恋って何だか燃えるよね」
「燃えねぇよ!!」

天使と悪魔が恋に落ちた(?)瞬間だった。


























拍手でのお礼小説ですw
最近パラレルづくしで個人的には楽しんでおります(笑)
その内追加話でも。


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