驚く人間の殆どと言えば『飛び上がる』という言葉通り、身体をピンと張らせて硬直状態に陥る事が多い。
しかしアレンに至ってはその逆、浸かっていた湯船に首近い肌を沈めた。
あまりに瞬時の事なので神田は気づいていないが違和感だけは無意識に残ってしまう。
だが今の神田にはそんな突っ込みを言う余裕などある筈も無く…、
「モヤシ!お前んとこの風呂借りようとしてんのに何チンタラ入ってんだよ!」
そんな事情など知らないアレンにとってはいつ何分入っていようが関係無いので一方的な神田の意見に猛反発する事になるがアレンは自分の姿を思い出し大人しく口を閉じてしまう。
「もう身体洗えてるんなら風呂場借りるからな」
「ちょっとちょっと!もう出ますからせめて僕が着替え終わるまではほんの少し部屋で待ってて下さいよ!」
「別に勝手に出てけば良い話だろうが」
「そうなんですけど…でも、そういう訳には…ごにょごにょ…」
「訳解んねぇな、お前が何言おうがもう待てネェ!構わず洗わせてもらうぜ」
どうにもこうにも相手に上手く伝わらない。
今この乳白色の湯船から出てしまえばバレてしまう、困ったアレンは神田が洗い終わるまではと諦めて待つ事にする。
(ていうか何で借りる側がこんなに偉そうなんですか!!?)
今一つ納得いかないアレン。
仕方なしに湯船に浸かるがそんな行動が余計神田に不審を抱かれてしまう。
(可笑しな奴だなコイツ。勝手に風呂から上がれば良いものを)
神田が風呂場を乗り込んで20分が経過した。
神田は髪が長い為、その部分だけ異様に時間がかかるのだ。
そんな中湯船に浸かるアレンは顔を真っ赤に汗だくになっていた。
(う〜もう限界だよ〜〜〜〜〜!)
アレンはかれこれ湯船に50分近く浸かっている。
それも首近くまでの身体を。
普通ならば逆上せあがってしまう状況をアレンは必死に耐えていた。
「おい!俺はもう洗い終わったぞ、お前はいつまで湯船浸かってる気だ?!」
「神田が風呂場出てくまで…ですよ」
「ふん!豪く強情だな。勝手に茹で上がってしまえよ!そんな事よりもう少しそっち動け」
真ん中を先導仕切っていたアレンを逆の方へ移動させると神田は大人2人でも狭い湯船に入ってきた。
アレンの反抗も空しく湯船には異性同士。
このままではバレるのも時間の問題になる。
「…おい、いい加減意地張るのやめて上がれよ」
「まだ入ってたいんです…」
どう見ても『まだ入っていたい』とは程遠い姿、神田は行動の可笑しいアレンに近づく。
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