泣いて喚いた後の記憶はとてもうろ覚えであった。
ただ夢の様な幸せだった気持ちなのは覚えている。
心から求める愛しい人の温かさ。
このまま夢は終わりたくなかった。
「ん…」
部屋の外から活動する人の気配を感じる。
それは朝を迎えたという事でもあり、窓にかかる暗幕とも似ているカーテンを仕切る暗い部屋はカーテンの隙間から漏れる光によって何とか辺りがうっすら覗える事が出来た。
それは毎朝当たり前の事なのだが今朝に限っては何かいつもと違う様な奇妙な気分だ。
ぼんやりする頭を何とか動かそうと気だるい身体を懸命に起こそうとする。
薄暗い部屋にかすかに感じる自分以外の吐息、ふと隣を見れば愛しい人の寝顔があった。
一番無防備な顔とはこの時の顔なのだろうなとアレンは笑みが零れ、その無防備な相手の唇に優しくキスを落とした。
「…随分と嬉しい起こし方だな」
「何だ…起きてたんですね」
「お前に今起こしてもらったのさ」
本当は自分より早く起きていたのかもしれない。
こういう所が何だか悔しい。
「おはようアレン」
「おはようございます…師匠」
漸く開かれるカーテンに部屋は眩しい程明るく日に照らされる。
白く眩しい光はまるで祝福している様に二人を包みこんでいた…。
「あら、アレン君部屋にいなかったからどこ行ったのか心配しちゃってたのよ?」
「あはは…すみません、夕べは師匠と話こんじゃってそのまま寝ちゃったらしくて」
「くす、アレン君らしいわね」
ひそかにクロスとの関係を知っていたリナリーからはそれ以上の追求もされず助かった。
そして僕はラビに謝らなくてはいけない。
彼に甘えすぎてしまった事、優しさに利用してしまった事、そして彼が自分を想う気持ちを…。
幼さ故の衝動は傷さえ付けてしまうのだと改めて思い知った。
僕は懺悔をし、これからは傷つけてしまった人達への償いとそして自分の幸せをこれからは正しい道へと進む事だろう。
こうして僕の二重生活は永遠に幕を閉じるのであった…。
end
●言い訳●
本館10000リク小説完結です。
今回は珍しくエロ無しシリアスを挑戦してみました。
何というかラビが最終的に可哀想な立場になってしまって申し訳なかったと…(汗)
また近い内にちゃんとした話でラビとアレンが幸せな話を書きたいかなーと思います。
希望された様な話にならなかったかもしれません…朔様すみませんでした…(土下座)
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