（教える？何を？）
神田の言葉にアレンは固まっていた。
いきなり何を言い出すかと思えば一人での『処理』を教えると言う。
冗談じゃないとアレンは神田を思い切り突き飛ばす。
「そういう低俗な冗談は止めて下さい！」
まぁ予想通りの反応だと神田は笑う。
だが冗談で終わらせる程神田は人間出来ていない事をアレンは未だ理解していなかった。
「その様子じゃまだ処理どころかＳＥＸの経験さえ無さそうだな」
「…っ！馬鹿にしないで下さい！！それくらいはもう…あっ！」
「……！？おい、まさかお前…もう経験してんのか？！」
（何も知らなそうな顔してもう経験済みかよ！？驚いた）
自分の知らない相手とすでに身体の関係が出来ていたと知った神田は無性に腹が立つ。
「おい、相手は誰とだ？まさかこの教団の奴じゃ無ぇだろうな！？なぁモヤシ！！」
出来れば教団の関係者ではあって欲しくないと思う神田。
何故そこまでムキになるのか自分でも解らない。
「貴方にそこまで言う必要は無いでしょう！」
「言うんだモヤシ！！」
「嫌です！！！」
（そこまで言っておいて何故相手を言わない！俺の知ってる人物だからか？）
「教団の奴なんだな？」
「…」
否定をしない所を見ると関係者である確率が高い。
（誰だ！コムイか！？リーバーか！！？それとも…）
「…クロス元帥か？」
自分の師匠の名前を呼ばれる事でアレンは身体がビクっと動く。
「元帥なんだな！！？そうなんだろ！？」
無言で顔を俯くアレン、それは肯定している様なもの。
元々馬鹿正直であるアレンはこの時ばかり自分の性格を悔む。
「女好きだとは思っていたがまさか自分の弟子にまで手を出してたとは…とんだ師匠だな」
「違います！そんなんじゃ無い！！」
クロスを冒涜する言葉にアレンは激怒する。
「師匠は僕を愛してると言って抱いてくれた。それを悪く言うのは神田でも許さないです！」
（あの火遊びが絶えなかった元帥がコイツに『愛してる』とだと！？騙されてるんじゃ無ぇのか！？『あの』元帥だぞ！）
神田は信じられないという表情をした。
神田の知ってるクロスはつねに女の噂が絶えなかった、もちろん教団内に居た頃だが。
大抵は遊びのみでの付き合いだったらしいクロスに本命の女性など余程の器では無い限り見つかる訳が無いと思えた。
しかしクロスは見つけた、自分の眼で、本気になる女を。
それがアレン・ウォーカー。
「師匠はいつだって僕の事を想ってくれてた…僕の知らない間でも。僕もずっと彼を好きだったんです。漸く想いが伝わって…嬉しかったんです。だから、僕の前で師匠の悪口は許しません」
神田の中で何か黒いモヤを感じる。
それは次第に大きくなりイライラとなる。
（くそ！面白くねぇ！！）
既に人のモノだと思うと神田の表情はいつも以上に不機嫌な顔付になり、アレンの肩を掴む手の力が強いものへと変わっていく。
「っ…！神田！痛いですって…！！」
「けっ、もう汚れた身体かよ！面白くねぇな」
「な…っ」
本音は違った、本当は悔しいのだ。
自分より先に出会った事、自分より先に純潔を奪った事、そしてアレンの心をモノにした事。
「その言い方止めて下さい…本気で神田を許せなくなります」
「別に許して欲しいとも思わねぇよ、俺は真実を言ってるだけだからな」
神田の酷い冒涜にアレンは目掛けて平手を打とうとするが、しかしその攻撃は寸前で神田によって手首を掴まれ阻止されてしまう。
「やっぱ女だな、口で勝てなきゃ手が出る」
「…少しでも貴方を仲間だと思ってた僕が間違いでした」
「はっ、『仲間』だなんて思われる方が迷惑なんだよ！気が変わった、お前で遊ぼうかと思ったがこの場でお前を泣かす事に決めた」
「！？」
逃げようと立ち上がるも掴まれた腕を引き寄せられ強引な口付けを与えられてしまう。
クロスの熱く・優しいキスとは違う荒々しいキスにアレンは拒否反応を起こす。
「んんっ！や…んっっ！」
本気の力で押さえつけられればどんなに鍛えたアレンでも同じ鍛えた男には叶う訳も無く、タイルの壁に押さえつけられ更に口内奥まで舌を絡め取られてしまう。
逆上せつつある身体に強引なキスでの呼吸の乱れでアレンは神田の胸元にグッタリともたれ、するとアレンを抱き抱えた神田は濡れた身体のまま浴室を後にし部屋のベッドへアレンを放りなげ、その場に落ちていたリボンを両腕とベッドの柱へ固定させてしまう。
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