壱陸 瑞光
2ヶ月経った今でもアレンの様子は落ち込んだまま。
判ってはいても心は晴れないでいた。
「アレン君…この所あまり食べて無いじゃない、ジェリーさんが温かいスープ作ってくれた
から少しでも口にしてみて?」
「ごめん…リナリー」
元々色白なアレンだがほとんど食事を受容れないその顔は更に青白いものへとなっている。
温かいスープが注がれるカップの温もりを頬で確かめながら気遣ってくれる仲間に心配させ
ていたという現実を改めた。
自分の為だと作ってくれた料理長にも謝罪を詫びるかの様その温かいスープを口にする。
「…おいしい」
「でしょう?」
子供をあやす様にアレンの頭を撫でるリナリー。
しかしそこで気付く微妙な変化を彼女は見逃さなかった。
「アレン君少し熱ある?」
「少し…だるいかも」
これまでまともな食事を取らないでいた彼女の身体はおそらく免疫が低下していたのだろう。
風邪かもしれないと即座にベッドへとリナリーはアレンを寝かしつけるのであった。
「お願いアレン君、もう少し自分の身体大事にして?」
「ごめんリナリー…こんな姿あの子が見たら悲しむでしょうしね」
皆の優しさが今の自分の状況を教えてくれた。
このままでは自分がダメになってしまう、そう気付かせてくれた。
しかし…
「もう1週間なのに…アレン君体調あまり良くならないの」
「まだ…ユアン君の事引きずってるのか、それとも…」
「最近は更に食欲湧かないみたいで…たまに口した食べ物戻したりも………あれ?」
相談にとコムイの所へきたリナリー。
一向に体調が芳しくないアレンをどうにか回復させる事が出来ないかと二人で考えていた時、
ふとリナリーはこれまでのアレンの症状に疑問を抱くのであった。
「兄さんもしかしてアレン君…」
「大丈夫かアレン?」
「心配かけちゃってごめんねユウ…」
横になるアレンを毎日の様神田は顔を見にきていた。
こればかりは励ますしか出来ない自分に悔しさが募る。
「もう立ち直れると思ってたけど…まだダメなのかな…」
「アレン、お前がしっかり立ち直らないと皆が悲しむ。そしてユアンも…」
「うん…大丈夫。もう皆には心配かけたくないから」
優しい接吻を交わしアレンは再び眠りへと瞼を閉じた。
そっと部屋から出ようとしたすぐの事扉の目の前には馴染みある少女とその兄の姿があった。
「コムイ。リナリー…。二人でこの部屋に来るとは珍しいな」
「ちょっとアレン君医療室に来てもらいたいんだけど」
「アイツ今眠ったばかり…」
「もしかしたら嬉しい事態になるかもしれないの!」
「何…?」
「ある程度の医療知識はあっても女性の少ないこの教団で女性に関する医療知識は
あまり詳しく無かったんだ」
何故今その様な言葉が出てきたのか理解に把握出来ないアレン。
しばし医療室の椅子で待つ事数分に顔の知らない年配の女性が室内に入る。
「他支部から来て戴いた専門医師の女性だ。彼女のいる支部では女性の業務員多いからね」
「はあ…」
「じゃあ彼女の診察宜しく頼むよ」
「えぇ、判りました」
医師との二人だけにさせると部外者は扉の外へと追い出される。
「コムイどういう事だ?」
「まぁそれは結果次第の楽しみって事で」
「くすくす、兄さんもったいぶらせたら神田不機嫌になるわよ」
今診察受けてる大事な時なのに何故か嬉しそうな二人。
その様子を見ている神田は言葉通りその顔は顰(しか)めていく。
「アレンが一大事って時にお前等…」
「アレン君は病気じゃないよ」
「病気じゃないってアイツ実際体調が…」
「だから専門医師を呼んで確かめてもらってるんじゃないか」
コムイの言葉がいま一つ理解出来ない。
言われるまま診察の終わりを待つ神田の目の前に漸く彼女のいる扉が開かれる。
開かれた扉の向こうの彼女は目を丸くさせ心此処に在らずな状態。
一体何が起こったのか神田はアレンの肩に触れ、その真相を問い質す。
「おい!何を言われたんだ!?」
「…ちゃん」
「何だって?」
「赤ちゃん…妊娠してるって…」
●言い訳●
このデキちゃった話を実は始めから書きたかったんです。
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