参 衝撃事実







「ユアン、もう大丈夫だよ…怖いお兄ちゃん行っちゃったから」
「ひっく…ボク、何かしたのかなぁ?」
「ユアンは悪く無いよ、悪いのはあのお兄ちゃんなんだから」
「…何でママは『お兄ちゃん』なんて呼ぶの?」
「え…?」






突然の来客によってコムイの胸元の衣服は神田によって掴み上げられている。


「ちょ、ちょっと神田君!とりあえず落ち着こうよ、ね?」
「これが落ち着いてられるかよ!あのガキの所為でかなりむしゃくしゃしてんだぞ?!アイツは一体何なんだ!」


この様子では本当の事など言える筈も無い、只さえアレンを女だと言う事実も知らないのだから。
困り果てたコムイはありきたりな話だがアレンの生き別れた弟だと嘘を伝える。


「弟だと…?もしかして親の顔も知らずに捨てられたとか言うんじゃねぇだろうな」
「例えだとしても具体的だね…」
「あのガキ、人の顔を見るなり『パパ』だと抜かして抱きつきやがってきた。そんなに親を欲しがってんなら里親でも
探してやったらどうなんだ?」
「…」


コムイはその神田の言葉に固まった…。






「何かいつものパパじゃなかった…ものすごく怒ってて…ボクあんなに怒られたの初めてだから何か悪い事
しちゃったんだって思って…」
「神田が…『パパ』?」


やはり聞くべきでは無かったと後悔をするアレン、紛れも無く最悪な結末。
一言発せば二言は返ってくるあの神田が…。
思考は既に真っ白だった、しかしどう解釈すればあの神田が優しいなど思うのか。
有り得ない未来に只アレンはショックを隠しきれないでいた。
こんな有り得ない未来は変えるしかないと思うその反面、この可愛い子供の存在も消す事になるのかと思うと胸が痛む。
果たして自分はどうすれば良いのか混乱が一晩中続いて寝られなかったと言う。




翌日の朝、コムイの呼び出しにアレンはユアンを引きつれ部屋を出る。


(今日は神田に会いません様に…)


ユアンから事実を聞かされもっとも現在会いたくない人物に辺りをキョロキョロ確認しながら目的の部屋へ移動をする二人。


「あ、アレン君!おはよ」
「リナリーおはようございます」
「ユアン君もおはよう」
「おはよーお姉ちゃん!」


正直声かけられて内心驚くアレン、しかし相手がリナリーだった為ホッと安心する。


「これから兄さんの所でしょ?私も行く所だったのよ」
「じゃあ一緒に行きましょう」
「あ、そうそう。男風呂場がちょっと改装するらしくて夜9時以降は女風呂が男性使うから注意してね。
たぶん0時過ぎくらいはもう誰も使わないと思うけど…」
「わかりました」


他愛ない普通の日常会話、この後この話が関わる事件が起きるとは誰も思いもしなかった。





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