あいつは…先程の奴、様子がおかしい。
近づくと相手の顔色は蒼白で今にも嘔吐し兼ねない状態に見えた。


「お前!どうしたんだ!?今医務室に連れてってやる!」


!?
アスラン・ザラ!!?
くそ!こんなタイミング悪く…


「…よ、けいな…事すんなよっ…部屋はすぐ、そこだから…横になれば…」
「馬鹿!そんなすぐ治る様な状態に見えないぞ!」
「いつもの…事なんだ、放っておいてくれ!」


いつもの事?
先程まであんな元気そうにしてた奴がいきなり真っ青だぞ!? こいつもしかして持病でもあるのか?
否、そんなのある時点で紅の制服に身を包む前に拒否される筈。
こいつは一体…


「本当にいつもの事なんだな?」
「ぅ…く、あんたしつこい…な!こんなの少しすれば…落ち着く!」
「…わかった。なら、せめてお前の部屋までは連れていってやる」
「?!!」


言葉と同時にシンの身体が軽くなる。
そう、あろう事かアスランに『姫様抱っこ』という形で抱きかかえられていた。
女性の姿では無く男に身を包んだこの姿で…
目の前に近づいた端麗な顔、急に沸き上げる羞恥にシンはおもいきり暴れだした。


「信じらんない…!離せっ!!」
「少し辛抱しろ!この抱きかかえ方が身体に負担かからないんだ。…しかしそれにしても お前結構軽いな、
こんな細くてよくあのMSを乗れるな…」
「馬鹿にするな…!これでも紅のエースだぞ!」
「…あぁ、そうだったな」


今思い出したかという様な赴きが余計腹が立つ。 そんな言葉の争いをしている内に自分の部屋に着いたのだが、そこで降ろしてくれれば良いものの、
そのまま部屋にまで入り込み自分をベッドへ優しく降ろしてくれた。


「ほら、お前の寝床だぞ。またいつ出動かわからないのだから今の内に回復しておけ」
「あんたに言われるまでもない…ふん」


しかし本人は気づいていないのか、お互いが言い争っている内に蒼白だったシンの顔色は打って変わって良くなっていた。


「…それにしても、何も無い部屋だな。普通植物か写真か何か…」


自分の言った事に後悔した。
『写真』
今の彼には家族がいないと先程聞いたばかりだったのに…迂闊だった。


「もう…放っておいてくれ…………」


シンは言い争って疲れたのかそのまま眠りについてしまっていた。
アスランは申し訳無さそうにそのまま部屋から去ろうとしたがシンが制服を着たまま眠りについてしまっていたので
せめて脱がしてやろうと上着のジッパーに手をかけるのだが、触れた胸元の感触に違和感を覚える。


(何か着こんでいる?)


それは中のタートルニットの下。
何か厚い生地の様な物が普通の肌着とは思えず、思わずタートルニットを捲り上げる事によってアスランは驚愕の表情となった。





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