『女』!?
プロテクターで潰してはいるが明らかに隙間からは元々豊かであろう胸の谷間が伺える。
まさかあのガンダムを動かしていたのが女性だとは思いもしなかった。
否、思いもしないのが当然であってこれは故意に性別を偽っていたのだとアスランは悟る。
しかしMSに男女など関係無い、更に才能があればこそアレに乗れるのだから。
さてどうしたものか…とアスランは考えこむ。
目の前には気分悪さにダウンしている者が居て、その原因の一つがプロテクターによって潰されている胸の圧迫だと
判ったとしても男である自分がそれを介抱して良いのかと…。
シンの言う通りいつもの事ならば放っておくのが一番であろうがアスランにはそれが出来なかった。
正に『キラ』と似ているから。
初めて会った時にドキリとした、一瞬キラの姿が被る程。
雰囲気が似てるのだと判った。
しかし性別を隠してMS乗って戦うという状況まで似てるとは驚きである。
アスランの心が揺れ動く。
彼女はキラでは無いと判ってるが…
性的欲望はキラだけにしか湧かない、だからこそ似ている彼女に欲が走ってしまう。
好きな女に対しては自分だって『男』なのだとつい認識してしまう。
一時の迷い。
あまりにもキラと離れてる期間が長すぎた。
そして、
胸を隠す禁断の衣を暴いた。
アスランは息を呑む、細い身体には思いもしてない豊かな胸。
年齢からしても多少大きい方の部類だろう。
服の下に隠された綺麗な白い肌。
他の男でも思わず目がいってしまうに違いない綺麗な身体。
胸にそっと触れると若さならではの弾力に足して滑りの良い滑らかな肌にアスランの吐息は興奮によって早まる。
ここまですれば流石のシンも意識を戻される。
「…!!?あ、アンタ何を…!」
「…っ」
「や、離せぇぇ!!!」
抵抗するものの、相手は男であって元軍人だ。力では適わない。
相手が抵抗しても慣れているのか意図も簡単に両手を拘束してしまう。
むしろすでにアスランの瞳に写るシンの姿は『キラ』としか見ていない。
ずっと…我慢していたんだ。
探しても探してもお前が見つからない。
お前を今すぐでも抱きたかった。
お前の存在を確かめたい…。
『キラ』の存在だけでアスランは恐ろしく感情が左右される。
それによって2年前の戦いでは同じ仲間を振り回してしまった程。
胸周辺を愛撫し、相手の敏感な箇所を探り当てる。
抵抗しつつ反応してしまうのは相手の巧みなものかそれとも敏感過ぎるこの身体の所為なのか…。
シンの眼はアスランを通りこして忌まわしい過去を思い出す。
男達の行為と笑い声。
シンは湧き出す恐怖に泣き出した。
「ふ…ぅう…アンタも…ヒック…アイツ等と同類って事かよ!」
「!?」
相手の涙に自分のしていた行動に気づき慌ててシンから離れた。
(俺は何て事を…!)
「す、すまない!俺は馬鹿な事を…」
「元ザフトのアンタだけは違うと思ってたのに!やっぱりオーブの連中は皆やる事為す事一緒なんだな!!」
「違う!俺は……え、一緒…?」
『やる事為す事一緒』?
言葉の意味に嫌な予感が過ぎる。
「お前…」
「アンタも…アイツ等みたいにそうやって欲を満たすんだな!汚い!」
「まさかお前…」
「何だよ今更!そうだよ!俺はオーブに家族を奪われ、『オーブ』の兵士の奴等に…ナチュラルの兵士に
コーディネーターだからだと身体を汚された!『死んだ家族』を目の前でな!」
愕然とした。
いくら何でも中立国の兵士がそんな事をするなど…。
更にコーディネーターだからと…
「そうさ…俺はその日からオーブを信じられなくなった。憎しみなんて言葉じゃ足りないくらい!アンタも元ザフトの癖に
オーブにすっかり感化されちまったんだな!!もう誰も信じられない…う…うぅぅ…」
自分の行動にこれ程までの過ちは無かった。
『キラ』会いたさから出た欲望が彼女を更に傷つけてしまった…。
自分で自分を殴りたい気分だった。
「すまなかった…!君が俺の想い人に似ていたものだから…つい魔が差してしまった…それでも君にした過ちを弁解する気は
無いが欲を満たす為だけでこんな事はしない!」
「今更戯言を言うな!」
「本当だ!君があまりに『キラ』に似ていたから…我慢が出来なかった…これはオーブとは関係無く俺自身の責任だ」
「…『キラ』?」
シンはアスランの想い人がずっとカガリだと思っていた。
だが彼は聞いた事もない別の人物の名前を想い人だと言う。
しかも自分と似ていると…
自分とそんなに似ている人物などいるのだろうか?
「あぁ、『キラ』は君と同じで性別を隠して戦っていた。…敵として」
「敵?」
彼は『キラ』という人物を詳しく語ってくれた。
幼馴染で親友、13歳の時に別れ、3年後再び出逢った時には敵だったと…。
まだその時には女性だとは知らず、戦争の最中、女性だと知って自分の本当の気持ちに気づき、そして相手も同じ想いを持っていたと。
なのに戦いが終わった後、消息が途絶えてしまって今も探し続けているらしい。
嘘の話かと思ったがこんな細かい事突如思い付くものでは無い。
本当に自分と同じ環境の持ち主がいるなんて…。
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