タイムリミットまであと30分。


漸く解放された少年は教室内でも相当の疲れを見せていた。
その原因というのが生徒会副会長の立場である上級生、キラ・ヤマトのお陰で。







「君が僕のモノになれば…イカせてあげる」


解放を求める身体の所為でシンはその悪魔との契約如く、彼の条件に…


「なる…っ、なるからもう…!」


殆ど強引に仕向けられた契約だと思う。
結局自分が彼のモノと約束されれば解放まで時間はかからず、彼の掌に弾け飛ばした体液はそれを物語る様結構な量だった。


「沢山出したね、それでもまだ出し足りないでしょ?続きはこの後約束してた生徒会室までね」


(続きなんてふざけんな!あんな契約クーリングオフしてやる!!)


まるで慣れた様な言い回しの専門用語は母親の受け売り、商品ならばたしかに何十日か程以内であれば無効に出来る便利な
制度だがこの場合では意味などまったく無いに等しい。
ただ単に思い浮かんだ言葉であり『無効』という言葉を言い換えただけであった。
しかし悪魔の様な狡賢い男からそんな契約の無効など出来るのであろうか…?
そこでシンが思いついたのが生徒会長の存在。
あんな男が側にいるのならさぞかし会長は苦労を重ねているに違いない!
シンはそんな確かでない確信を持ち、キラ・ヤマトの悪行を訴える計画を立てていた。


キーンコーン…


用意されていた弁当もおそらく無駄になってしまうだろう今日の昼時間、何故昼に呼び出すのか育ち盛りの少年からして
みれば何とも腹立だしい。
通りがかりの生徒に場所を聞けば、校舎から少し離れた孤立する建物が生徒会室だと聞かされる。
まったく生徒会室如きいくら学校は無駄金を使っているんだと呆れてしまう。
そうして扉の近くまで進もうとすると突然開く扉から会長と親しげに話をする色黒の男が現れる。
別に隠れる必要など無いのだが条件反射的に近くの木陰につい隠れてしまった。
すると二人の会話が聞こえてくるが、今の状況からすればまるでシンが盗み聞きしている様にも見える。


(別にこれは偶然だからな!たまたま俺はここにいて、勝手に向こうの話が聞こえてるだけだ!)


何だかんだと自分に言い訳をしながらも向こう二人の会話は鮮明に聞こえてくる。


「サンキュー、アスラン。最近マンネリっぽい感じでアイツもここん所一回しかヤらせてくれなくてさ。
お前の道具使ってからアイツ結構何だかんだでイイみたいだし」
「道具の感想は嬉しいがお前も努力はしろよ?」
「わーかってるって」


(何の会話だ?『道具』??)


色黒の男が離れれば、今は会長一人のチャンスだ。
キラ・ヤマトが室内にいたとすると話すタイミングが失ってしまう、話すなら今。


「あ、あの!!」


木陰から現れた一年生に会長であるアスランは流石に驚く。


「うわ?!驚いた…っ、君は…?」
「突然すみません!何だか大事そうな話をされていた様なんでこちらから話すタイミング掴めなくて…」
「はは…大事って話でも無いけどね、それで?」
「じ…実は、生徒会副会長に関してどうしても会長に聞いてもらいたくて…」


副会長という言葉に相手の男もそれに反応をする。


「アイツがどうしたんだい?」
「そ…その…、実はその人から嫌がらせを受けていまして…会長なら助けてくれるかと思って…」
「…アイツが?」


信じられないと言うよりは珍しいと言わんばかりに見開く瞳。


「俺の大事な物を取られた上、無理な条件を突きつけて…本当に困ってるんです!」
「そうか…アイツがね…。申し訳無いがその件に関して俺にはどうにも出来ない」
「何でです!?」


唯一の頼める人物である会長までもが懸命に訴えても助けを拒否する。
すると…


「それはね、アスランも僕に弱みを握られてるからだよ」


二階の窓から顔出すのは紛れも無く嫌がらせの張本人キラ・ヤマト副会長。


「『アレ』も弱みに入るのかキラ?」
「バレたら叔父さんに監禁されそうじゃん」
「確かにね…でもお前も関わってる訳だからちょっとそれは違うな」


何だか親しげな二人。
相談する相手をもしかしたら間違えてしまったかもしれないと嫌な汗が頬を伝う。


「俺はお前に弱みを握られてる訳では無く、これはお互い共同の事だろう?」
「あはは、ほんの冗談だって」


次第に嫌な展開を感じてきたシンはこの場から逃げてしまおうと思うが会長までもが悪魔の手先と知った事をショックに
足が竦んでしまっていた。


「それでキラ、この子は新しいリピーターかい?」
「それもあるけど…彼は僕の可愛い『恋人』だよ」
「お前が『恋人』だだなんて言うくらいだと今回は本気なんだな」
「そ、一目惚れv僕がそう感じたなら運命だと思わない?」


ただ呆然としているシンをアスランは腕を引き、建物内へ連れ込めば恋人だと語る自分の親友の元へ彼を引き渡す。
無言が続く彼の様子をアスランは覗えば、シンは常識ではありえない二人に対し怒りを言い放つ。


「アンタ達可笑しいよ!人の意思関係無しに強引に話を進めてさ!!一体何なんだよ!共同だとかリピーターだとか恋人だ運命だ
訳判らない事ばかり話しやがって!!」


すると先程まで自分の身を蝕んでいたピンクの器具をキラは目の前にぶら下げる。
突然の行動にシンは顔を真っ赤にし、それに対して更に怒りを爆発させる。


「ふざけんな!そんな物で俺を遊びやがって!」
「共同ってのが『コレ』なんだけど」
「…は?」


道具を見せられそれが共同ですと言われても益々理解が出来ない。
しかし続けて語られるその事実、趣味と実績を合わせた二人にとって都合良い事。
つまりは機械いじりの得意とするアスランはこういった『大人の道具』を製作し、そしてその新しく開発された物はキラがリピーター
として連れてきた人物に使ってはその性能を報告する、という言わばこれは仕事商売(ビジネス)。
つまりシンに使用されたそのローター、初めはその性能を確かめる為敢てわざと電車内で近づいた。
しかしいつしかキラは彼に本気となり、言わば今の展開にまで発展したのだった。


「アスラン、コレは初めてのコでも中々反応は良かったよ。それに結構な距離でもリモコン反応良いみたい、だけど壁みたいな
障害物の前には少しリモコン反応悪かったな」
「ん〜そうしたら赤外線高反応チップを埋め込むか…でもすると少しコストが割高になるしなぁ…」


造ってる物の割りには真面目な赴き、だがシンにしてみれば只の迷惑に過ぎなかった。


「もうどうでもいいけどいい加減携帯返せよ!!」


シンの大声につい真面目な会話をする二人は中断となり、漸く気付く疑問にアスランはキラへ質問する。


「そういえばキラは彼に用事あって呼び出したんだろ」
「うん、そうそう。だからアスラン今日は外して?」
「また悪い癖だなキラ」


クスクス笑えばアスランは「そうであればお邪魔虫はこの場所から退散するよ」と一言告げ、この部屋から出て行ってしまう。
漸く二人だけになった今、只ならぬ空間から今でも逃げ出したい気分のシン。
嫌な笑を浮かばす目の前の彼を睨む事に精一杯であった。






「…『約束』通り、話を進めようか」







●言い訳●
アスランはキラ(悪魔)の仲間でした。
彼のお陰さまでキラはシンと出会えたという事で。
次回こそホモホモします。





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