「ん…」


まるで長時間寝てもいた様な気分で覚醒させるシンは痛む身体から自分に起きた状況を思い出し、そして愕然とする。

(俺…とうとうアイツに…)

滲む涙は男として格好悪いと思うのだが悔しさから目頭の水溜りは重力に引かれる様一粒一粒が落下していく。
昼休みなど当に終え、部屋の時計を見ればとっくに5時限目を終えようとしていた。


「犯っちまえば後は放置かよ…くそっ」


こうなればもう授業などどうでもよくなり、シンは重い身体に脱ぎ捨てられた制服を纏うとこのまま教室へは戻らず自宅に帰る事を決める。


(本気で転校相談しようかな…父さんと母さんには悪いけど)


惨めな姿を家族には曝け出したくない、ならばこれ以上の泥沼へハマる前に学校を変えれば良い話なだけだ。
幸い勉学の成績は悪い方では無いので大抵の所なら難無く編入出来るに間違い無い。
今なら事故でも病気でも理由に多少の入学が遅れたとでも言っておけば敬遠される事も少ないだろう。
そうと決まればこの忌々しい部屋から出ようとするが肝心の扉が開こうとしない。


「何で開かないんだよ!!くそぉ!」


ガチャガチャ激しく音を立てても鍵は一向にかかったまま、その原因は内側には鍵が付いていないから。
もちろん当初からそうなっていた訳では無く、後から『何者』かの思惑によって差し替えられたのだ。
いくら格闘技マニアの彼でもドアを蹴り破るだけの脚力など持ち合わせていない。
そしてここは2階、窓から見下ろして飛び降りれる高さでないのは一目瞭然。
ここまで逃げ道を用意されていないとなると監禁状態と一緒だ、完全に手の内だと理解すれば約束とは違う相手の身勝手さに
イライラは募るばかりだった。


キーンコーン…


HR終礼の鐘が鳴り恐らく相手はもう直ぐ帰って来る頃だろう、部屋のソファで怒りの視線を送りながら相手を待つ。

カチャカチャ…

鍵を差し込む音がこの部屋の所有者がすぐ目の前にいる事を物語る。
更に睨みつける視線の先からは今まで開く事が許されなかった扉の解放と共に、自分にとって許せない人物が帰還した。


「やぁ、気分はどう?」
「見りゃ分かるだろ、最悪だ」


あははと軽い笑いが何とも腹煮え止まらない。
するとこの目の前の男、キラ・ヤマトはシンに近づき頬に触れると女なら魅入ってしまいそうな微笑に変え、そして再びシンの唇に軽い接吻を交わした。


「嫌がらないんだ…?」
「どうせ拒否する選択権なんて無いんだろ?」
「よく分かったね」


ここまでされれば嫌でも分かってしまうだろう、シンはこの短時間で相手の性格がよく理解出来た。


「…で、約束は終えた訳だけど俺は帰してもらえるんだろな?」
「帰してあげるよ…だけど」


タダでは帰してくれない、恐らくそうだと思ってはいた。


「今度は君が意識ある中で抱いてから帰してあげる」


そうだろうと分かってはいた事、しかしただ素直に従うのも性格上しゃくに障る。
再び抵抗を試みるが、それは逆に相手に火を付けたのと同じである。



「今度こそ…気持ちよくさせてあげる」














●言い訳●
かなり久しく更新です。
そして次回ではエロを…








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